今より昨日のそのまた昨日。

 

 世界が果ての終わりの際(きわ)に、皆(みな)が忘れた小さな村に。

 

 とってもこわい領主が一人。夜の血塗(まみ)れた領主がひとり。

 

 彼が夢見る星何処(いずこ)、彼が待ち人今何処。

 

 全ては今や時の底、もはや明日のわすれもの。

 

 ――それでも昨日を望むなら、覗いて御覧よ遠眼鏡。

 

 彼女のそれだけ忘れない、【   】彼を、覚えてる……

 

忘れられ図書館 蔵書№M‐一三七

 

 

まっかくろのりょうしゅ

 

 

 一

 星を見ている、男がひとり。

 どこか無機質な風鳴りが吹き嘆く。彼の周りで、彼が立つ丘で。

 男は微動だにせず片目を瞑り、ただ遠眼鏡(スコープ)を、その先にあるものを見つめ続けた。

 ――やがて、観測が終わり、男は静かに頷くとその場を後にしようとした。

 が、視界の端にいつもとは違うものを捉えた男は再び遠眼鏡を覗き込み、その違和感を知った。

 男は、小さく笑った。

 

 二

 あまり、良いものではないな……

 馬車に乗り始めて半日を得た後、トトレノワは人知れず、そう結論付けた。

 とにかく揺れが酷い、初めての乗車体験に少しだけ浮かれていた半日前の自分を、彼女は今哀れんだ。

 体の節々が痛む、窮屈な『灰色の軍服』がそれに拍車をかけていた。

(とはいえ……どうせ『死ぬんだ』。これも最後と思えば、いっそ微笑ましくもある)

 トトレノワの瞳に、仄暗い決意の色が浮かんだ。

 と――

 馬が歩みをやめ、揺れと共に馬車は止まった。

「着きやしたぜ」

 馬車の御者が侮蔑交じりのにやついた笑みを、隠しもせずに告げる。それに嫌悪しつつも、トトレノワは微笑みを返した。そう訓練されていた。

「ありがとう、悪くない半日でした」

 良くもなかったが。

 だが、御者は笑った。どうやら彼にとって、その返しは存外に心地好いものだったらしい。嫌味が消え、想いのほか愛嬌のある笑みを浮かべた男は最後、馬車から降り去っていくトトレノワへと、心ある一言を送った。

「一ヵ月後、迎えに来る。『領主』の館から帰ってきた乙女はいないが……待ってるぜ」

 

 三

 薄ら寒い程に、生き物の気配がしない館内を歩きながら、トトレノワは過去に思いを馳せた。

 彼女が生まれた頃、既に『グールリャン』は滅びの道を歩んでいた。

 病んだ軍事国家『グールリャン』。奇怪なる機械人形達との勝ち目無き戦争は民を疲弊させ、微かに残った糧は貴き者たちが独占する……そんな、終わりの際が国の『最果ての村』で彼女は育った。

 度重なる圧政に耐え切れず、逃げに逃げ続けた末の国民が辿り着く、安息無き終着の村。敵国とグールリャンの境界線。最終防戦領土が一端。

 何処で生まれたか、如何して最果ての村へと辿り着く事になったのか。トトレノワはそのどちらも、母に尋ねた事はない。意味がないと思ったからだ。

 ただ、自分がそこにいる。その事実だけがあった。それで良かった。

 優しい母がいる。父はいなかったが、眠れぬ夜に母から聞いた。英雄のように誇らしい父を知っている。だから、こんな世界でも彼女は生まれた幸せを感じていた。ままならぬ日々を、享受していた。

 それでも許せないモノが……ただ、ひとつ。

『人が霧へと還る』

 それを言い出したのは誰か、今では最果ての村の中で、決然とした恐怖となっているそれは、村を見下ろす丘から――否、正しくは丘にある館より訪れていると噂されていた。

 『領主』。今も続く奇怪な機械の国との戦争において、数十年以上も前から圧倒的劣勢の中で数少ない勝利をもたらして来た『防国の英雄』。

 現在、小康状態の危うい戦況において、最終防戦領土を守護する任に就いているとされる男が、村に災厄を招いていた。

 確証は無い。だが、彼女は見たのだ。月の無い夜、領主の館からこの世のモノとは思えぬ不気味な異音と共に舞い降りた。魔弾としか呼び様の無い、ナニカを……

 それが、トトレノワをここに至らせた。

 領主へと近づくため、最果ての村を抜け出しグールリャン国支軍に属して二年。少女は乙女へと変わり、そうして今、領主の館に『招かれた』彼女がいる。

(もうすぐだよ、お母さん。魔弾も、領主も……私が暴いて、殺すから)

 求める全ては、愛する人々の安らぎが為に。

 扉は、開かれた。

 まるで、今にも朽ち果てそうな巨木のようだ……初めて『それ』を見たとき、トトレノワはそう錯覚した。

 赤と黒、意匠の衣装に身を包み、自分以外は誰一人として館に置かぬ……最果ての村を知る彼女にとって、ひとりぼっちの暴君と呼ぶに等しい男が、そこにいた――

「ようこそ我が館へ。大した持て成しも出来ないが……コフッ、歓迎しよう。幼き同士よ」

 領主は笑った。眼だけが、笑っていた。

 

 四

 あの『領主』が時折、黒髪の乙女を欲している……軍内部ではそれなりに有名な話だった。

 実際には1ヶ月の間、領主の部下として出向すると言うもので、任務の内容としてはこれと言っておかしなものでは無い。対象者が限定されている事も、おかしくはあるが絶対に無いとも言えない。

 最大の問題は『出向した乙女達が、二度と元の部隊に帰って来ない』と言うこと。

 『士官と部下に大きな隔たりがある』以上、明確な答えを知る事は出来ない。そのため、ゴシップじみた憶測ばかりが囁かれていた。

 曰く、異常な性癖を持った領主に辱めを受け、惨殺されたのだと言うもの。

 曰く、領主は秘密裏に軍の精鋭部隊の面接を行っており、優秀な市民出を選抜しているのだと言うもの。

 曰く、領主には生き別れた娘がおり、その子を探すため、軍務を利用としているのだと言うもの。

 ……最後の方はともかくとして、噂のどれもが否定しきれなく。ただ帰ってこない、その事実だけが存在していた。

 トトレノワはそれに賭けた。何だって良かった。領主に近付く事が出来れば、何であれ。

 そうしてつい先週。ようやくトトレノワに『お呼ばれ』がかかった。

 後は、純潔でも何でも諸共捧げて、代わりに命を貰い受ける……その筈、だったのだが。

 日も暮れ、欠けた月が照らす館の一室でトトレノワはひとり、呟いた。

「なにかが、ちがう」

 『湯船に浸かった』トトレノワは、現状に困惑していた。

 

 五

 ……思えば、初めからおかしかった。

「我が名はニーゼアンル・ギド。階級は大尉だが、概ね領主と呼ばれている……コフッ、まあ気軽に『ギド』とでも呼んで欲しい」

 君の名前は、なんと言う?

 癖なのか、咳払いを交えつつもそう問いかける領主に一瞬、声が出なかったトトレノワに非は無い。

 グールリャン国支軍の階級制度はひどく単純だ。『貴族は士官、市民は兵隊』その一言につきる。貴族以前に絶対的な階級の差があるのだ。どこに自らを呼び捨てにさせようとする上官がいると言うのか。

「なんという?」

 ここにいた。

「――特別諜報五三七、です」

「……ふむ」

 言いよどむ領主。恐らく予想外である部隊からの出向に驚いたのだろうと、彼女は予想した。

 『特別諜報』。それは軍における嫌われ者の代名詞だ。

 部隊員全てが女性のみで統制された諜報部隊。所属するものは数年の歳月を訓練に費やし、女であることそのものを武器とする。軍を支える陰の部隊……などと言うのは全くの名目であり、実際は軍に属さない諸侯への体が良い『貢物』として存在でしかない(無論、諜報活動も行ってはいるが)

 何せ敵は機械人形。情事など意にも解さない、意すらもないのだから……

 だが、戸籍もいらず、入隊すれば生活には困らない上家族に僅かとは言え祝金も与えられるため、孤児や貧しい家庭の娘達にとっては最期の手段であり……

 軍に属する者のみならず、一般市民からも『軍囲いの娼婦』とまで蔑まれている部隊であるが、それでも入隊する者は後を絶たなかった。

 丁寧な口調で僅かに微笑む。二年の訓練により培った。感情を表さない無難な笑みだった。

「ご安心ください。未だこの身は乙女ですので」

 嘘ではない、トトレノワは訓練を終え、正式に国士軍へと入隊したばかりの身。手練手管は学んだものの、貴き者達の歪んだ性癖を満たすため、部隊の中には純潔を強いられる者も少なくは無い、国では珍しい黒髪では尚更の事だった。

 恐らく、それを聞いた領主は愉悦の笑みを浮かべる事だろう……

(下種が!)

 胸中、彼女は罵った。

 ――しかし。

「あまり、自分を物扱いするのは止めた方が良い。コフッ、私が聞きたかったのは軍名ではなく……君の、名前だったのだが」

「は……?」

 

 六

 ぷくぷく。

(訳が分からん。普通、士官から名を問われれば『軍名』だろうに……)

 顔の下半分を湯船に沈ませ、あぶく交じりに毒づく。

 士官と兵隊。明確な違いを持たせるために用いられる、人を番号化したもの、それが軍名。

(なのに、奴は名前を尋ねた――)

 変わり者所ではない。貴族であり、上官であると言う自らの優位を、隔たりを取り払うかのような発言。

 万が一とはいえ名前を言えば身元が判明する恐れがあるため、部隊の守秘性と、あくまで出向している身である事を主張してどうにかお断りしたものの(ついでに名前は呼び捨てから、どうにか様付で許してもらった)その時の衝撃は今もこうして尾を引いていた。

 ぷくぷくぷく。

(と言うよりか、今も継続中な訳なのだが……)

 自己紹介らしきもの終えた後、初対面での言葉通り、領主は『歓迎』してくれた。

 屋敷を親切丁寧に案内され。

 ご馳走を、それも『手料理』を振る舞われ。

 果てには――こうして風呂などと言う、高級な物にさえ入れられている。

(あったかい……)

 トトレノワ初の入浴体験であった。

(いや、いやいやいや、気持ちよくなっている場合ではない! 思い出せ、ここは『領主の館』――これも所詮。領主の気まぐれか、或いは趣向なのだろう……安堵したこの身を汚すための邪で卑劣な浅知恵に違いない。だがッ!)

 勢いよく起立する。

 濡れた肢体と黒髪が、窓から零れる月明かりで儚く妖艶に照らされる。

「身体はくれてやっても、心まで屈するとは思うなよ……!」

 笑みだけが、獣のそれだった。

 ――それから数十分後。

(もうやだ……)

 お嬢様が着るようなネグリジェを身に纏い。月明かりの下、トトレノワは何故か領主と共に、同じベッドで『寝ていた』。

 慣れぬふわふわとした衣服に困惑しながらも、最初は領主の寝室にある『赤黒いベッドと微かに香る血の匂い』を不気味に思い、そこから恐ろしい想像をしたのだが、結局は……

「では、お休み……」

 本当にただ寝る事しか要求して来なかった事にいよいよ分けが分からなくなった彼女と領主を、おつきさまが優しく照らしていた。

 ――こうして、復讐(ひがい)者と加害者の奇妙な一週間が始まった。

 

 七

(おかしい、おかしい、おかしい! 絶……ッ対に、おかしいッ!)

 ぱたぱたぱたん。とハタキを振るう。舞い散るホコリがふわふわと楽しげだ。

 ……トトレノワが領主の館を訪れてから三日が経った。

『館の管理を手伝って欲しい。それが、君を招いた最大の理由にして――コフッ、緊急の任務だ』

 初めて聞いた時、意識が飛びかけたのを覚えている。

 確かに、初日で練り歩いた館はお世辞にも清潔とは言い難かった。不潔と言うほどでは無かったものの……まるで、そう、『ポーテム(妻を失った男の意)が精一杯、手探りで掃除を行う』が如き、中途半端な有様だった。

 それだけではない。炊事、洗濯、初日に見た限りでは、全ての家事がその調子で……

(まったく、だからと言って、まったく!)

 胸中は荒れに荒れていたが、手を休めはしなかった。丁寧に、されど何かへの当て付けが如く、籠める怒りは殊更激しい。

『いい、トトレノワ? 何か大きく心が揺れている時は、尚更手を休めてはダメよ。むしろ思いっきり吐き出すつもりで掃除をしなさい……心も一緒に掃除する。それが家と自分を健やかに保つコツよ』

 そう、明るくふざけて教えてくれた母の教えは、村を出てからも強く心に残り、今この時も非常に役立っていた。

 それが良いのかは分かりかねるが。いや、きっと、たぶん、確実に、悪い。

「ふむ、やはり掃除は君の方が数段上手のようだな……」

 そう呑気に呟く領主は、『床を掃いていた』

「……失礼ですがギド様、今は天井などのホコリを落としておりますので、先に床を掃くのはあまりお勧めしかねるかと……出来れば先程はたき終わった場所の方を掃いて頂きたく」

「……そうか、うん。そうだな」

 心なしか背中に寂しさを滲ませながら去っていく領主を見送りつつ、トトレノワは小さくため息を吐いた。

(なんだろう、この状況……)

 手伝うどころでは無かった。最初は領主の指示に従っていたのだが、そのあまりの不手際ぶりに今や彼女が家事全般を仕切るに至っていたのだった。

 村生まれの女は伊達では無い。

 開けた窓から空を仰ぎ見る。

(今日は、いい洗濯日和だな……ふ、ふふ)

 そのおかしさに慣れてきた自分に、彼女はこっそり涙した。

 

 八

 昼過ぎ――

 食事を終えた後は、その立場も本来のものへと戻る。

「あの的を撃て」

「ルエ(はい)」

 引き金を引く。黒金の耀きは、華奢な彼女にはあまりに不釣合いなもの……だが、三射の後、遠くに立ててあった射撃用の的は、その中心近くに三点の穴を開けていた。

 家事の礼と、領主が射撃訓練の『先生』を買って出たのが昨日の事。英雄とも称えられし男の教授とあれば、断る理由などトトレノワにある筈もない――まして、それが領主自身を殺す糧となるのであれば尚更の事であった。

「ナー(良し)。命中率もまずまず……そして何より、銃の口径も正しく分を弁えている」

「大切なのは威力ではなく、それに振り回されない自分だと、教わりました」

 ほう、と関心の声が領主の口から漏れた。

「珍しいな、鋼の硬さを持つ人形相手では何よりも行き過ぎた暴力が尊ばれると言うのに」

「……特別諜報ですので」

「あぁ、そうか……そうだったな」

 特別諜報部隊の主な舞台は国内、軍内にあると言われている。

 不穏・反乱分子を排除することにのみ――つまりは脆いニンゲンを殺すために銃を用いる。そのため、威力は然したる問題でもなく、むしろ携帯や扱いの易さこそが至上とも言える。その事を知るが故の納得だった。

「コフッ、続きを……では、次は『アレ』だ」

 そう言って、今度は的とは離れた方を指さす。

 そこには森から抜け出て来たのであろう、兎がいた。先ほどの銃声にもさほど反応を示さなかった所を見ると、銃の怖さを知らないようだ。

 恐らく、仕留める事は容易い……だが。

「……意味がありません」

 かぶりを振り、撃つことを否定する。上官に抗う事は相手が貴族以前に軍人として許されざる行為であったが、初めに領主からは『訓練時は思った事をそのまま告げても良い』と許可されていた(だからと言って、これからの事を思えば心証を悪くするような行為は極力控えるべきなのだが)

 食材としてその命を奪うのであればともかく、館にはそれなりの食材が貯蔵されている。育ちもあってか、トトレノワは意味無き殺生を避ける傾向があった。

 しかし――

「ドー(良くない)。確かに意味はない。だが、あの兎が例えば、そう『敵国が病の毒を仕込んだ毒兎だとすれば』。あれは軍人として殺さなければならない」

「それ、は……こじつけでは、ありませんか?」

「こじつけで人が殺される事など、いくらでも有るではないか」

「ッ――確かに、そうですが」

 それを為した貴様が言うのか!

 そう怒鳴りたくなる己を飲み込み、トトレノワは鈍い相槌を打つ。その様子に訝しみながらも、領主は言葉を続ける。

「覚えて置くと良い、五三七……大抵の戦争には、国と国。互いの正義と理由がある。だが『殺す事』それ自体に意味はない。誰かを守るため、信念を通すため……どれ程崇高に見えようが、そこに意味など求めてはならない。認めては、ならない。それを認めてしまえば……そんなもの、快楽を理由に人を殺すものと如何程の違いがあると言うのか」

「……」

 戦争批判とも取られかねない発言を、至極あたりまえの論理であるかの如く語りかける領主を見て、彼女は本当に分からなくなった。

 最果ての村で、無意味な死を振りまく暴君と評される領主。

 だが、その無意味を許されざる、唾棄すべき悪であると説く領主。

 疑問。

(彼は本当に、村の皆を殺したのだろうか……)

 胸中で問い掛けるトトレノワへと最後、領主は優しい眼をして、語った。

「大事なのは五三七、何よりも『覚悟を持たない』事だ――傷つけ。撃って、殺して、そのことに傷つき、だが迷わず引き金は引け。それだけが自らを殺さず、自らを壊さず、自らを這ってでも前へと進ませる。唯一つの……方法なのだから」

 兎は、いつのまにか消えていた。

 

 九

 月が大きく欠け、夜が薄暗くなった頃……

 トトレノワは悪夢を見ていた。

 乙女が少女であった頃、彼女の世界は酷く見え辛いものであった。長く伸ばした髪で顔をすっぽりと覆い隠していたからだ。

 彼女だけではない。村の子供達全員がそうだった。

 いつの頃からか自然と生まれた風習。少しでも死を等分しようとしたのか、あるいは『誰かが特別なナニカで死ななかった』。そんな、妬みや恨みが起こらない様にしたのか……どうあれ、風習は生きるための絶対だった。

 そんな視界も夜になると開けた。家の中では顔を隠す必要もないからだ。

 明確な世界にいたのは母と……新しい、父と呼ぶべき人。

 彼が村へと流れ着いてきたのが二カ月と少し前、それ程の月日があれば情を育むには充分であった。

 トトレノワさん――

 優しい口調の人だった。それ以外は、どこにでもいるような凡庸な人だった。でも、そんな所が『お父さん』に似ていると母は言った。

 それなのに。

 月の無い夜、村の皆はただ、家の中で身を寄せ合い、震え――やがて、緊張と日々の疲れにより眠りに落ちる。

 どうしてあの時目覚めてしまったのか、彼女は今でも問い掛ける。目覚めなければ、未だにこの身はあの村に在った筈なのに、と。

 トトレノワが気付いた時、そこには眠りにつきながらも彼女を優しく抱く母しかなく……

 母に謝りながら、彼女はそっと、夜へと飛び出した。

 後はもう、断片的な恐怖が、コマ送りで流れるだけ。

 

 走るトトレノワ。急がないと、彼が。

 幾人かの村人が、外に、どうして?

 みんな、眼があかい、不気味、そんなのどうでもいい。

 チキ、チキ、チキ。なんだろうこの音は、わずらわしい。

 見つけた。さあ、早く一緒に帰らないと。

 閃光、まぶしい、ギュッと眼を閉じて。

 開けたら、人が、霧みたいに。

 彼は?

 振り向く、同時に閃光。

 きれいな、ひかりが、かれを、つらぬく。

 ……おかあさん、ないちゃうな。

 

 最後、薄れゆく意識の中、光が元来た先を見る。

 そこには、不気味に鳴動する。ナニカが――

「――ァッ!」

 眼が覚めた。ようやく、覚めた。

 血生臭い、赤黒いベッドに寝転びながら、トトレノワは手を掲げる。少女は、乙女へと戻っていた。

 傍らには領主。すぐにでも手が届く場所に――

(今、殺せば……!)

 下着に隠しておいた。折り畳み式ナイフの感触を確かめる。それを引き抜いて喉を掻っ捌くのは、酷く容易く思えた。しかし。

 五三七――

 幻聴。時々抜けていて、だけど厳しくも優しい、そんな人の声。

(……まだ、まだだ。魔弾の謎を暴いてからでも、全ては遅くない)

 それは、まるで自らに言い聞かせるかのように。

 トトレノワの胸に浮かんだ感情を知る者はまだいない。

 彼女が産んだ悪夢の錯覚か、血臭が殊更強い。

 いつもの咳が、聞こえたような気がした。

 

 十

 月が消えた。

 夜を歩く男がひとり。

 その足どりは暗がりの中に置いてさえ、躊躇い一つ無く……

 男は夜と化していた。人である限り、誰しも恐れるモノへと。

 さな、さな、さな、さな。

 やがて、男は足を止める。

 そこには建物があった。そうとしか言いようの無い、全く不可思議な、それが。

 館の様にある程度の美意識が込められているわけでもない、巨大な真四角。無骨と無機質の権化がそこにはあった。

 男が掌を鈍い黒色の壁に押し当てると、その異様に反し、真四角は男をたやすく招き入れた。

 男が中へと踏み入れた途端、光りが満ちる。男は――領主は、動じない。『コレ』はこういうものだと知っているからだ。

 館からさほど離れていない場所に、それはあった。

 砲台。そうとしか呼びようのない歪な、それでいて兵器以外の何物でもない、鈍色をした。巨大な異形の化け物。

 素早くよじ登る、その様子に躊躇いは無い。何十回と行ってきた行為が故に。

 やがて、領主は怪物の頂に立つ。そこには巨体に似つかわしくない、小さな座席があった。

 乗り込む。すると座席は自らの主を待ち侘びたかのように、彼が座った目線の先を妖しく光らせた。

 光の中には、ぽっかりと黒い、小さな窪みが。

 領主は首から提げた遠眼鏡(スコープ)を、その窪みへと……

「そこまでだ」

 

 十一

「――五三七、か」

 領主が開いた入口近く、銃を構えた乙女が一人。その射線には過去に討つと決めた相手が。

 トトレノワは、吼えた。

「あぁそうだ! 故郷を奪われ、家族を失い、大切な名すらも捨てて軍の犬となった五三七だッ!」

 それは、怒りと悲しみに満ちた。押さえ切れない胸の内を解き放つかの様な叫び、悲鳴。彼女は気付かない。その吐露は、何よりも相手に理解して欲しい時に出るモノだと。

「月が消えた今この時を以て、魔弾を暴く! お前を……止める!」

 かつて誓った想い。僅かに違うは交わした日々か。

 だが――

「そうか、分かった……だが少し待て」

「な……動くな!」

 銃声、それは下方から狙ったにしても尚、的外れな位置に着弾する。

「すまないが、今は時間が惜しい」

 トトレノワの警告を無視し、領主は遠眼鏡を押し込んだ。

 光が、目覚める。

 砲台のみならず、真四角な建物も全てが、暴力的な光を放った。

 余りの輝きに、彼女は顔を覆う。

(何が――)

 幾何かの時を経て奔流は収まっていき、そして。

「……これは、なんだ」

 

 真四角な建物は取り払われ。

 彼らは何時しか月の下。

 鈍色の偽装は剥がれ落ち。

 白銀の咢(あぎと)は君臨する。

 

「事情を話している暇は無い。後で話す。今はただ……」

 トトレノワの問いにそう返し、領主は手前の操作盤を繰る。

 彼女にはその様子が見えない。だが、見えたところで理解出来様筈もない。

「ただ、見ていろ」

 ――何も無い空間、砲台の前方が突如乱れる。

 そこには懐かしい光景が映っていた。最果ての村だった。

 静寂に包まれた筈の村では、人影が。

(何故、外に……!)

 新しく来た村人だろうか、いや、それでも村の皆から注意を受けている筈だ。

 だが、そんな事はどうでも良かった。いや、『良くなければならなかった』

 何故なら。

「発射」

 閃光。

「発射」

 閃光。

「発射」

 光が、稲光にも似た青白い、何時か確かに見た光が人影を――『還した』

 精神(こころ)の傷が、哭いた。

「                  」

 撃った後に、叫んでいる事に気付いた。

 

 十二

 被弾、命中。

「グッ――」

 呻き、顔を歪める領主の姿を見て、トトレノワはようやく狼狽する事が出来た。

「あ、うぁ……」

 銃は最早貫く意思を持たず、力無く頭を垂れる。

「なんで、私は、本当に――」

「殺すつもりなど無かったと?」

「ッギド!」

 呼びかけに、領主は片腕を掲げた。その腕は血に塗れていた。

「ドー(良くない)。言った筈だ『迷うな』と、それは君の死に繋がる」

 撃たれたと言うのに、その言動は少しも変わらない。むしろ余裕さえ感じられる領主にトトレノワは安堵した。

(……どうして私は安堵している)

 いや、もう既に、彼女は理解していた。

 共に暮らし、助け助けられ、時には厳しく、そして優しく。

(たぶんもう、私に領主は殺せない)

 恋愛感情ではない。だが、決してそれに劣らぬ尊ぶべきものに、トトレノワは気付いた。

(私は彼に『お父さん』を感じているから……)

「五三七。君が私に対し、憎しみを抱いている事は気付いていた。君の敵意は、殺意は――あまりに純粋だ」

「……」

「些か順序が狂ったが、撃ちながら説明する」

 無傷の片腕を振るう。再び白銀は息吹を取り戻した。

「君は復讐では殺せない人間だ……だが、だからこそ、君に全てを教えよう」

 魔弾を放つ直前、領主は村の人影を指差し、言った。

「見ていろ、五三七。彼らは……」

 人形だ。

 

 十三

 そうして領主は語り出す。ひとりで抱え続けた。秘密を。

時折逃げ延びてくる集団の中に紛れ、村には機械人形の偵察兵が訪れる事を。

 そして、彼らが偵察を終え帰還した後は、戦闘用の人形たちによる、本格的な侵略が始まることを。

 村の人に教えれば……そう叫ぶトトレノワを、領主は否定する。

 そうすれば、村の皆は自分以外、誰ひとりとして信用できなくなる。そんな村に、未来は無い。

 そして、だからこそ怨み、憎む相手が必要なのだと……

 領主は守っていたのだ。村を、ひとりぼっちで。

「この砲台のようなもの……これは元々彼らの、機械人形達の平気を鹵獲したものだ。大勢の命を犠牲にして手に入れた『人形を霧へと返す。雷の毒を放つ矢』……勝てると思うか? いいや、勝てない。そもそも、争うことすら自殺行為に他ならない。これとて、『ただ使うためだけに』数年の歳月をかけざるを得なかった」

 文明が違う。と、領主は言った。

 その言葉には今までトトレノワが感じた事の無い。彼の、ギドの怒りが籠められていた。

 その矛先は、敵国ではなく――

「愚かな事だ。あれはな、五三七。あれは蜂のようなものだ。向こうからは決して攻撃などしない。あくまで『防衛の指令を受けているに過ぎない』。撤回の指令? その指令を出せる人々は既に死に絶えていたよ……一度だけ、私は武器を何一つとて持たずに彼らの国へと出向いた。そして、知った。彼らがいつまでも、終わることのない命令を愚直に守り続けているだけの悲しむべき哀れなマリオネットだと言う事に……」

 いや、と。領主は自嘲混じりに呟いた。

「哀れむべきは、奴らの国の技術に目が眩み、藪蛇を突いてしまったお偉方の尻拭いをさせられている。我々か――」

「そん、な……それ、では――それでは! 私たちは…こんなの! なんの、ために……」

 言葉がうまく、繋がらない。それ程の度し難さ。

「そうだ。無意味だ……だが、だからこそ、この愚かは終わらせねばならない。そう遠く無い未来。軍は、国は死んで生まれ変わるだろう……それが果たされるまで、私は何度でも壊そう。彼らを、『殺そう』」

 そうして、全てを曝け出した領主は最後の標的へと狙いを定めた。今度はもう、止めようとするものはいない、いる筈も、無い。

 ……しかし。

「――コフッ」

 掠れるような、咳。ここに来て、領主と共に過ごした夜に、幾度と無く聞いた不吉な音。

 領主は、血を吐いた。

「そんな……! 腕に当たっただけの、筈なのに……」

 困惑するトトレノワに、領主は気にするなと言った。

「……元よりこの身は病に冒されている身。君の責任では決して無いのだ。故に五三七――気に病むな。これは命令だ」

「――ッ」

 この男は、一体なんなのだろうか。トトレノワの胸に、言い様のない感情が宿り、荒れ狂った。

 防国の英雄。暴虐の領主……全てがまやかしだった。彼女にとって、短い年月を共に過ごした彼女にとって。彼は、ギドは、あまりにも――

 人の良い。どこにでもいる。ただの……ヒトだった。

「……ふざ、けるな!」 

 砲台をよじ登り、領主を押しのける。

 恐らく、後ろで眼を見開いているであろう領主を肌に感じながら、トトレノワは胸中で叫んだ。

(死なせるものか! 死んで行かせてなるものかッ!)

 遠眼鏡(スコープ)を覗き込む。

 そこにいたのは、母だった。

「え……なに、え……」

 呆然、自失。遠眼鏡の先にある光景は、トトレノワにとって信じがたいもの。

 母は、違う。自分の母親なのだから、当然だ。

 違うのは、妹だった。

 手紙に書いてあった通り、栗色のふわふわとした髪が村の風習に従って顔が見えないよう、ぼうぼうに伸びていて……

「それが、最後の人形だ」

 どうか、違ってほしい……その願いは、後ろから告げられた声により閉ざされた。

「何が君を変えたのかは分からない。だが、君は選んだ。ならば撃て」

「……は、い」

 指を、引き金に添える。後は引くだけ、撃つだけ、壊すだけ。簡単な事だ。

 だが、その簡単が出来ない。

(はやく、はやく壊さないと、駄目なのに……ッ)

 ニンゲンの様な人形。それも躊躇う理由の一つだった。少なくとも、遠眼鏡(スコープ)に移る少女の怯えは本物のそれと大差ないように見えた。

 でも、そんなものよりも、何よりも――

(おかあさんが、また……ひとりぼっちに…!)

 父は死に、娘とも離れ離れになり、果てにはようやく出来た新しい家族すら、失わねばならないのか。

 いくら引き金を引こうとも、一向に引けない……そんな彼女の手を、ふいに、領主の掌が包み込んだ。

 彼は、言った。

「最初は一緒に背負ってやろう……だから、殺せ。守るために殺して、傷付け。君はそれが、出来る子だ」

 引き金を、引いた。

 閃光が、走る。

 人形が、霧に還る。

 夜が、終わる。

 涙を流す、母が見えた。

 

 十四

 何処かで、何が起ころうと、変わらず朝は訪れる。

 血に塗れた領主と、彼に肩を貸すトトレノワは、領主の願いにより、丘の先へと辿り着いた。

「すまないな」

 そう礼を言った領主は、砲台から取り外し首に提げていた遠眼鏡(スコープ)の倍率を二、三調整し、次いで覗き込むと、満足げに頷いた。

「……やはり、朝の始まりは星を見るに、限る」

 呟くと同時、糸が切れたように領主の身体は地に臥した。

「ギド様ッ!」

 駆け寄り、抱き抱えようとするトトレノワ。だが、領主はその手を拒んだ。

「もういい、もう何も見えない、助からない……だからこそ五三七。君の名前を教えてはくれないか? ついぞ待ち人は来なかったが、それでも君の名は……覚えて、死にたい」

「……トトレノワ。と、申します」

 彼女は答えた。答えねばならないと思った。

――と。

「……そう、か…………く、ふふ」

「なにが――」

 問いかけの声は、掻き消された。

 笑う、哂う、領主が、わらう。快哉であると、救済であると、そう云わんばかりに、死の間際とは思えぬほどの声を張り上げながら……

「何も笑う事は無いでしょう……確かに、珍しい名前とは思いますが……この名は、亡き父から受け取った。大切なものなのです」

 恥ずかしげに頬を染めながらも、そう告げたトトレノワに最期。領主は笑って応えた。

「そうだろう……例え、遠く離れ離れになろうとも、いつか、どこかで巡り合った時には決して見逃さないように……そんな、不思議で、可笑しくて、大切な名前にしたのだから……」

「…………え」

 もう、返答は無かった。

 領主は、眠った。

 

 十五

 御者が迎えに来るまでの数日間、トトレノワは館の中を隈なく探索した。その結果。彼女は『自分の父親』を、領主を深く知る事となる。

 領主の書斎にて発見された日記には、戦功を上げ、貴族になってからの苦悩が記されていた。

 機械の国から奪取した数少ない雷の毒を用い、戦勲を上げる事幾度か……気付いた時にはもはや手遅れで、彼は市民出の活躍を疎んだ軍上層部の企みにより『市民から貴族にされてしまっていた』事。

 既に家族は故郷を追われ、探す事すら困難になっていた事。

 手を尽くして探したかったが、防衛を疎かにすれば、国の何処かにいる家族が危険に陥るかも知れないと、出来る限りの捜索を続けながら、国を守るために戦い続けて来た事。

 そして、国防の要となり、軍の上層部からも容易に指図が出来なくなる程になった頃、ようやく見つけた家族は最果ての村に追いやられ……自身が、既に死んだものと知らされていた事。

 二年前、娘が軍に入ろうとしていた事までは分かっていたが、村の風習により、自分譲りの黒髪である事以外は、ろくな手がかりがなく……恐らく自身を殺しに来るであろう黒髪の乙女を、娘を手元に引き寄らせる為、領主は軍内部へと、黒髪の乙女を欲したのだった。

 消えていった黒髪の乙女達の謎も、判明した。

 トトレノワ自身もそうだが、最低限の保障が受けられる軍に入って尚、出世のために領主へと純潔を支払う事すら厭わぬ者は、総じて強い意志を持っていた。国の改革、家族の平穏。そして、軍上層部への復讐。

 それらを領主は、館に滞在するひと月の間に細かく見定め、覚悟を持つ者を……つまりは全員を、革命軍と引き合わせていたのだった(実はトトレノワを館に連れて来た御者も協力者だったらしく、その事実は彼女に驚きを与えた)

『五三七よ、君が真実、私の娘で在ろうが無かろうが……君が求める道を選べ。それが最後の命令だ』

 日記の最後――彼が死んだ日には、そう書かれていた。あの時既に、領主は死を覚悟していたのだろうか……同じページには二つの封筒が挟まっていた。

 一つは革命軍への推薦状。今までの乙女達と同じ、世の不条理と戦う道。

 一つは領主の相続登記。ただひとり領主の後を継ぎ、娘として恨まれつつも、村を守る道。

 トトレノワは決めかねていた。

 理由は知った。事情も分かる。

 だが、それでもなのだ。彼女はただの一度も母の元へと歩み寄らなかった父に怒りを覚えた。村を守るためには領主の存在が不可欠なのは確かだが、娘として継ぐことをトトレノワは迷っていた。

 手を伸ばせば届いた筈なのだ。愛する妻を、娘を、家族を。

 それがわがままと理解していても、ままならぬ心がそれを否定していた。

 

 十六

 ほんの、気まぐれだった。

 滞在最後の朝、これからどうすれば良いか結局分からないまま、トトレノワは丘の先端へと訪れていた。

「おはよう。ギド……」

 異形のオブジェと、少し盛られた土。そこには領主が眠っていた。トトレノワが、埋めた。

 木の杭を組み合わせて作られた簡素なものが刺さっているそれは、最果ての村で死に行くものに送られる墓標だった。

 墓標には、領主のものだった遠眼鏡(スコープ)が提げられている。

(……そう言えば、あの時ギドは何を見たのだろうか)

 星を見たと、彼は言った。

 立っていた場所、眺めていた方角、高さ……自分でも意外なほどに覚えていた。あの時の彼に、自分を合わせる。

 息を、呑んだ。

 そこに映っていたのは母だった。悲しくて、辛くて、そんな事が何度も起きて……それでも、今日を強く生きる母の姿だった。

 視界が、滲む。

「ばかだよ……お父さん」

 トトレノワは泣いた。不器用な父の愛を知って、笑って泣いた。

 

 そうして、彼女は――

 

 

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お母さんへ。

 

 村から出てから今日で二年が経ちました。時折、ムルタル芋のシチューが恋しくなります(いつも書き始めは食べ物の事ばかりで、何だかわたし、食いしん坊みたい)

 

 ……妹の事、手紙で読みました。

 お母さんの気持ちを分かるなんて言えない。ただ、会うことすら出来なかった事が……すごく、悲しい。

 

 でも、だから、トトレノワは今、前を向いて少しずつ歩いています。

 

 最初は戸惑う事ばかりだった村の外の生活も、すっかり板に付いてきました。

 

 こう言うと、たぶんお母さんは心配すると思うけど、それでもやっぱり大変です。泣きそうになる時も……少しだけ、あります。

 

 そんな時、私は『星』を見ます。

 

 お日様みたいに明るくは無いけれど、自分だけの大切な、星を……

 

 いつか、遠くない、いつか。

 

 私は帰ります。

 

 誰も霧になんて還らず。何も怯えなくて良い……そんな日が、きっと来るから。そんな未来を、『私達が』叶えるから。

 

 だからお母さん。

 

 その時は笑顔で――

 

 

お母さんとお父さんの愛する娘。トトレノワより。

 

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